ブックタイトル血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011|株式会社メディコン

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概要

血管内留置カテーテル由来感染の予防のためのCDCガイドライン 2011|株式会社メディコン

病因カテーテルの汚染には次の4ルートが確認されている。1)挿入部位の皮膚微生物が皮下のカテーテル経路に侵入したり、カテーテルの表面に沿って入り込んだりして、カテーテル先端でコロニーを形成する。これは短期カテーテルでは最も一般的な感染経路である[37, 211, 212]。2)手指や、汚染された輸液剤または器具の接触によるカテーテルまたはカテーテルハブの直接的な汚染[213,214]。3)あまり一般的ではないが、別の感染病巣からカテーテルに血行性の播種が起こることもある[215]。そして、4)まれに、輸液汚染がCRBSIを招くこともある[216]。CRBSIを決定づける重要な病原因子としては、1)器具の材料、2)カテーテル周辺でフィブリンシースを形成する、フィブリンやフィブロネクチンなどタンパク質の付着からなる宿主因子[217]、そして、3)付着性微生物が産生する細胞外高分子物質(EPS)を含む感染微生物固有の病原性因子である[218]。カテーテル材料には、表面にむらがあり、特定の菌種(例:表皮ブドウ球菌、カンジダアルビカンス)の微生物付着を高めるものもある[219, 220]。これらの材料を使ったカテーテルは、微生物のコロニー形成とその後の感染を特に受けやすい。例えば、フィブリンシースの形成により、シラスティックカテーテルはポリウレタンカテーテルよりもカテーテル感染症のリスクが高い[217]。一方、カンジダアルビカンスによるバイオフィルム形成は、シリコンエラストマーカテーテルの表面のほうがポリウレタンカテーテルの表面よりも起こりやすい[219]。医用生体材料の表面特性の改良で、カンジダアルビカンスのバイオフィルム形成能力が影響を受けることが示されている[220]。さらに、血栓形成が起こりやすいカテーテル材料があり、カテーテルコロニー形成とカテーテル由来感染の素因を与える可能性がある[221, 222]。このような関連があることから、CRBSIを減らすための補足的な仕組みとして、カテーテル由来血栓の予防が重視されるようになっている[223, 224]。宿主因子との関係における特定微生物の付着特性もCRBSIの病因において重要である。例えば、黄色ブドウ球菌は、タンパク質付着因子と結合するクランピング因子(ClfAとClfB)を発現することにより、カテーテルで一般に存在する宿主タンパク質(例:フィブリノゲン、フィブロネクチン)に付着できる[217, 222, 225, 226]。さらに、付着は、微生物(例:コアグラーゼ陰性ブドウ球菌[227,228]、黄色ブドウ球菌[229]、緑膿菌[230]、カンジダ属[231])による細胞外高分子物質(EPS)の産生を通して強化される。ESPの大部分は、微生物バイオフィルム層を形成する菌体外多糖からなる[218, 232]。このバイオフィルムマトリックスは、二価金属正イオン(例:カルシウム、マグネシウム、鉄)によって増強され、これにより微生物が自らを包埋する強固な包有物となる[233?235]。このようなバイオフィルムは、微生物に宿主防御機序に対する抵抗性を与えたり(例:多核白血球による抱き込みや殺傷に対する障壁として働く)、抗菌薬に対する感受性を低下させたりする(例:抗菌薬が微生物細胞壁と接触する前に抗菌薬を結びつけるマトリックスを形成するか、代謝的に静止状態で抗菌薬耐性のある存続細胞集団をもたらす)[228, 236, 237]ことで、様々な微生物の病原性を強化する。カンジダ属にはグルコース含有輸液剤が存在すると他の細菌のものと類似した粘液を産生するものがあるが、これは、中心静脈栄養輸液を受けている患者での真菌病原体に起因するBSIの割合が増加している理由になる可能性がある[238]。17